だからそうなるのよ

moriyasu11232011-02-15

みのもんた朝から激怒 日刊スポーツ報道に「何でこうなるのか」』
タレントのみのもんた(66)が、朝から大激怒した。それも人気の日本ハム斎藤佑樹投手(22)を巡る騒動というから穏やかでない。(…)
「新聞を見て驚いた。何でこういう記事になるのか、まったく分からない」
怒りの矛先は14日付の日刊スポーツが報じた「取材禁止エリアで佑呼び止めインタビュー みのに厳重注意」という記事に対してだった。(…)
みのは、13日に沖縄・名護市で行われている日本ハムの春季キャンプを訪れて取材。その際、サムスンとの練習試合にプロ初登板する斎藤を試合前、取材が禁止されている名護球場の正面玄関付近で直撃インタビューした。番組内では、そのシーンが放送され、「登板をいわれたのはいつ?」「初登板どうでした?」などとみのが斎藤に質問。最後に「握手してください」といって別れるまで、約3分間の“取材”だったという。
プロ野球で今、一番人気の斎藤だけに連日、数百人の報道陣が訪れている名護キャンプ。球団は混乱が起きたり、練習に支障をきたさないよう、報道陣に対し取材方法、取材エリアなどを厳しく取り決める規制を敷いている。規制を守っている他の報道陣からは「やったもん勝ちか」という声が上がったという。実際、日本ハムの島田球団代表はTBSのスタッフに対し、事情を聴いた上で注意。これを日刊スポーツは「みのに厳重注意」と報じた。
これに対して、番組でみのは記事に対し、猛然と反論。「斎藤投手と会うのは難しいと思い、あきらめてロケバスに乗り込んだところ、懇意にしている元球団代表の小島(武士)さんから電話で『今なら会える』というから走って球場に行ったんです。日刊スポーツという全国紙がなんで…。弁護士を通じて問い合わせます」。
確かに、放送されたシーンでも球場玄関で斎藤が笑顔でみのを迎えており、無理矢理の直撃といった雰囲気でもなかったようだが…。一挙手一投足に大騒ぎの斎藤を巡る、みのと日刊スポーツのバトルの行方は?
(2011年2月14日 産経ニュースより抜粋)

みのもんた朝から激怒(by産経)」などと仰々しく書き立てているが、これは「イチローが朝から野球」とか「タモリが昼からサングラス」と同じくらい日常的なことである(毎朝「怒る」のが彼の仕事だから)。
また、他の報道陣から「やったもん勝ちか」という声が上がったようだが、TBSに対してこれを言うのは、マクドナルドのセットにポテトがついている理由を問うのに等しいくらいの愚である。
今回の「佑ちゃんフィーバー」に際して、球団側は多くの「規制」の詳細を報道各社に通達しているはずであり、みのもんた氏本人および随行クルーがそれを知らなかったとは考えにくい。
記事によれば、みのもんた氏は「斎藤投手と会うのは難しいと思い、あきらめてロケバスに乗り込んだところ、懇意にしている元球団代表の小島(武士)さんから電話で『今なら会える』というから走って球場に行ったんです」と「反論」したようだが、残念ながらこの「反論」は「ルールは分かってたけどお兄ちゃんがズルしていいよっていったんだもん!」という幼児の逆ギレと同じかそれ以下のレベルである(幼児たちよ比較してすまない)。
さらにいえば、斎藤選手が「笑顔でみのを迎え(by産経)」たことは、彼らの行為が「無理矢理の直撃(by産経)」だったかどうかや「行為そのものの是非」とは無関係である(佑ちゃんはいつでも笑顔だから)。

自分の頭と身体で考える (PHP文庫)

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自分が暗黙のうちに、どんな馬鹿なことをやっているかということも理解していない人が多すぎる。だから、自分を「正しい」と思う人が増えてしまうんですよ。自分は悪いことなんかしたことないという顔をしているわけでしょう。冗談じゃない。大変な差別をして、大変な圧迫をしています。それが分かっていれば、多少は後ろめたいから、あんまり人をいじめないと思うのですがね。
(by養老孟司氏)

拙稿「メディアの不誠実」に掲載させていただいた「杏林大割りばし事件」の関係者の稿を再録する。

私たちは、1999年7月に起きた「杏林大割りばし事件」の時の担当医とその実兄です。本件は、男児が割りばしを口にくわえて転び、その割りばしが脳に達して亡くなった不幸な事故です。救急車で運ばれた男児の初療をし、診療の過失の有無が問われました。一連の訴訟では無罪、請求棄却となり、担当医に過失がないことが認められました。
これに関連して放送倫理・番組向上機構(BPO)は2009年10月末、TBS「みのもんたの朝ズバッ!」の本件関連報道に対し、「重大な放送倫理違反」を勧告しました。(…)
私が書類送検された2000年7月、多くのテレビ局が匿名としたのに対し、TBSは実名を報道しました。TBSが執拗かつ不公平だったので、私の両親(父親は弁護士・元第二東京弁護士会人権擁護委員長・故人)は同年8月、BPOに人権侵犯救済を申し立てました。この際、BPOは解決の仲介をしましたが、TBSは申立人らの話を聞くだけで解決策を示しませんでした。(…)
その後、刑事・民事訴訟で担当医の無罪や請求棄却が決定し、今度こそ正確に報道されると期待していたところ、TBSはまたも「みのもんたの朝ズバッ!」で私たちを取材せず、計2回(06年3月の刑事第一審判決時、08年2月の民事第一審判決時)、問題の女性ジャーナリストを専門家に招き、みの氏と2人で誹謗中傷を繰り広げました。
みの氏は、「(杏林は真面目に)取り組んでいないから、こういう事故が起きて(患児は)死んじゃったんじゃないか!杏林の姿勢を僕は疑う」「素人でも脳に損傷があると考える」などと発言し、女性ジャーナリストも、「この程度の医療水準で許されるのなら、真剣に頑張っている多くの医師はプライドを傷付けられる」などと語り、判決を読んでいるとは到底思えない、事実誤認の無責任トークを展開しました。(…)
半年間の審理の後、BPOはTBSに「重大な放送倫理違反」があることを認めました。この決定は、ADR裁判外紛争解決手続)としてのBPOの審理規定で最も責任が重い勧告です。これにより、私たちの社会的評価が直ちに回復するわけではありませんが、不正確な報道に反論する機会となり、その結果がBPOの記者会見という形で周知された意義は大きいでしょう。私たちは、マスコミとの長い苦しい戦いに「一応」の区切りをつけられました。理不尽な報道に疑問を呈して他界した亡父も喜んでいると思います。
(『割りばし事件報道にBPO勧告 長い戦いに「一応」の区切り(Nikkei Medical 2010年1月号)』より抜粋)

みのもんた氏に期待されている役割が「朝からズバッ!と怒る」ことであるのを慮ったうえで、あえて「自分がされて嫌なことは他人にもしない(&自分がされて嬉しいことも他人が喜ぶとは限らない)」という態度を心がけるべきことを自戒を込めて注進しておきたい。