情報化プロセスの重要性

moriyasu11232010-06-18

「欧州チャンピオンズリーグ(CL)の経験から得たものはなんですか?」
4月6日、インテル・ミラノとの準々決勝第2戦に敗れた直後のモスクワ・ルズニキ競技場。取材陣から発せられた型通りの質問に、CSKAモスクワ本田圭佑は禅問答のような答えを返した。
「これからの取り組み次第ですね」
セビリアとの決勝トーナメント1回戦第2戦で記録したFKからのゴールは、欧州CL決勝トーナメントの日本人初得点。現行制度の欧州CL準々決勝に進出したのも、日本人では前例がない。世界最高水準と言われる大会の、タイトルに近い場所での濃密な4試合。いい経験でした、自信がつきました、ワールドカップにつながります。そんな定型のコメントを言えたはずなのに、本田はそうしなかった。
その真意に近づきたくなった。翌日、モスクワ市内のレストランでインタビューの約束をしていた。
「日本の記者やサッカーファンの人たちは、CLで僕が成長したと思ってくれているかもしれない。でも、CLで1点取ったからといって、僕の中で何かが劇的に変わったということはない。僕にとっては練習試合の1点と同じ。ゴールは取り続けることに価値がある」
「CLに出たという経験も同じで、それだけで成長したとは言えない。今の時点では、点を取ったとか、取れなかったとか、ただ現実があるだけ」(…)
「ポイントは昨日の悔しさ。これから僕のモチベーションになる。それが成長につながったとき、『あの経験が生きました』と言える」
つまり、次の目標を得たことこそが収穫ということか。
「そう。目標が明確になった。僕は毎日、こうなりたいというイメージを頭のなかに描いている。でも強い相手と1試合すると、そうやってイメージする以上に明確に、なりたい自分の姿がはっきりと見えてくる。『こうなりたい』が、『こうでなければならない』に変わる。昨日の試合がそれだった」
目に見える成長や変化がないわけではない。(…)
CSKAに入って間もないころ、1千メートル走を繰り返しながら疲労の指標となる血中乳酸濃度を測る持久力の測定があり、本田の測定値だけは何本走っても最後まで疲労状態の目安を超えなかったという。そしてその後2週間の合宿中、走って追い込む練習では常に、もっとも走力の高いグループに入って鍛えられた。「自分では走るのは苦手と思っていた。今じゃ走るのが当たり前。もっと走らなければと思うほど」。足元の技術でプレーする選手という印象は、過去のものと言っていい。
体が大きくなったという印象は、体重が2キロほど増えたという事実が裏付ける。体脂肪は日本代表でも最少クラスの7%前後のままだから、パワーを生み出す筋肉が増えたということになる。シーズン前の厳しい体力トレーニングの結果だ。
体力面の充実はプレーに余裕を持たせている。CSKAの実戦形式の練習は、接触プレーで選手が倒れても笛が鳴らない。選手も黙って立ち上がり、またぶつかりあう。「練習が始まったら1歩目から全力。けがをしないように練習の1時間前から準備をするようになった。けがで休んだら競争に勝てないから」
ロシアリーグの他チームもタフな戦いを挑んでくる。どのチームもよく走り、常にプレッシャーを掛けてくる。ダッシュを繰り返す逆襲の応酬もいとわない。ペースの速い試合の中で、本田は「判断を下す力が磨かれる」と実感している。
そういう積み重ねがあったから、欧州CLでも激しさやスピード感に慌てなかった。(…)
「慣れというか、そういうところはもう普通の感覚。中盤から先で何ができるかが課題」。そこに「なりたい自分」が浮かび上がる。
「球を持って前を見たとき、味方が2人いてもインテルの選手が5、6人いたら、『たぶん球を取られるな』と、考えるより先に反応していた。『味方のサポートを待とう』とか、『まず球を取られないようにしよう』とか、そういう選択を反射的にしていた。帰りのバスの中で思い出しながら、こういう比較をした。『レアル・マドリードクリスティアノ・ロナルドだったら、爆発的なパワーを使ってスピードをあげて、DFの背後まで抜けていこうとするんじゃないだろうか』」
どんなに素晴らしい技術を持っていても、誰にも止められないようなスピードを持っていても、実行に移す「決断」がなければスーパープレーは生まれない。
「得点シーンとか、ボールをもらってどう仕掛けるかとか、時間があれば常にイメージしている。そのとき、最大限のリスクに挑んだプレーをイメージする。頭の中ではメッシやクリスティアノ・ロナルドを超えるプレーをしてる。ちょっと大げさ過ぎるぐらいでいい。実際にプレーするとなると、そこまでできないのが人間だから」
挑戦的なプレーは試そうとしてもなかなかうまくいかないものだ。「毎日の練習が挫折の連続」。だが、この取り組みは自分を高めるいい方法だという手応えをつかんだ。試合に臨む気持ちの準備は、そういう繰り返しから得た成果の一つだ。
「欧州CLの試合前は、プレーのイメージを膨らませて、空回りするぐらい気持ちを盛り上げた。そのぐらいのリハーサルをしておかないと、ワールドカップでは自分の気持ちの高ぶりに押しつぶされてしまうと思ったから。制御するのは大変。でもうまくいくようになってきた」
食事のときや眠るとき、ふっと気持ちを落としてやる。眠るときなら、英語やロシア語の本を読んで気持ちをサッカーから切り離した。今ではその方法で、10〜20分で眠りにつけるようになった。
試合前、儀式のように決まった行動をしようとするスポーツ選手は少なくない。だが、まったく同じはありえないと本田は考える。だから試合開始から逆算して、自分の状態を微調整していく。「イメージで試合の準備をすることを本能でやっている人も多い。でも本能じゃ不十分。制御しないと」
ワールドカップに挑む23人が発表される10日、初戦のカメルーン戦までのカウントダウンは「あと35日」となる。「勝負を決めるのは準備。なかでも気持ちの準備以上のものはないと思う」。精神論と言えば過小に評価されがちだが、理屈抜きに「できる」と思えるかどうかの差は大きい。スーパープレーに挑むかどうかの分かれ目もそこにある。
「実力的にはこのままじゃ全然だめ。焦りと不安、自分たちの方が弱いという危機感しかない。この気持ちはたぶん、カメルーン戦の前日も変わらないと思う。でもピッチに立つときには『なんかやれそうな気がする』という感覚になっていたい」。現実を受け止めてこそ次に進める。「上がいるから面白い」と本田は言う。シンプルな言葉を見つけて付け加えた。「そう、これが下克上ですよ」(編集委員忠鉢信一
(2010年5月8日 アサヒコム「下克上、だから面白い 本田圭佑」より抜粋)

5月初旬にアップされた、畏友・忠鉢信一氏筆の記事である。
本田選手のプレースタイルや人となりは寡聞にして知らないが、トップアスリートが備えるべき矜持を持った選手であることが窺い知れる。

安易に解を求めず、極限まで「論理的」に「考え抜いた」からこそ、最後は「心の衝動(by為末大)」に任せて走ればよいという「理論」にまで到達できる。
言い換えれば、ほんとうに頼りになる「理論」は、極限まで考え抜かなければ沸いてこないということである。
「考え抜く」というのは、脳だけのモンダイではない。
「あり得ない力(by為末大)」を引き出すのは、全身で考え抜いてきた「経験」があればこそである。
「あり得ない力」は、メンタルトレーニングでは引き出せない。
それは、「自由に」思考する人間にのみ到来するものである。
そして、人間がその心身のパフォーマンスを最大化するのは、「自分は今、自らの宿命が導いた、いるべき時間の、いるべき場所に、いるべき人々とともにいる」という確信が得られるときなのである。
(2008年7月9日 拙稿「考え尽くした道を走る」より抜粋)

トップに至るアスリートには、少なからず「共通点」がある。
閑話休題
最近のサッカー報道には、ゲーム分析による選手の走行距離を示したものが散見される。

『平均7.8キロ…日本「走り勝ち」 岡田指示通り、データ裏付け W杯』
■決勝点の本田、11.092キロ…カメルーンFWエトーは9.012キロ
日本−カメルーン戦を含むこれまでの1次リーグ10試合を振り返ると、ある傾向が浮かび上がる。相手に「走り勝った」チームが5勝2敗3分けと優勢。オーストラリア、デンマークをのぞく8チームが勝ち点を挙げている。
突出した数字を残したのが開催国の南アフリカ。標高1700メートルを超えるヨハネスブルクでの試合にもかかわらず、GKを含む13人の出場選手は平均9.143キロを走破。大会第1号ゴールを挙げたMFチャバララは、チームトップの12.297キロを走った。後半に追いつかれて引き分けに終わったが、「地の利」を見せつけたといえるだろう。
この日の前半、日本選手が走った距離はトータルで53.572キロ。カメルーンの猛攻を受けた後半は運動量がむしろ増え、56.368キロを走った。最も長い距離を走ったのはMF遠藤で11.264キロ。決勝点を挙げた本田は、遠藤に次ぐ11.092キロだった。対するカメルーンの平均は7.354キロ。エースのFWエトーはチーム6番目の9.012キロにとどまった。
初戦のカメルーン戦、第3戦のデンマーク戦を高地で戦うことになった日本は高地順化を図るため、5月26日から11日間、標高1800メートルのスイス・ザースフェーで直前合宿。疲労の残りやすい高地で追い込んだ影響が出たのか、10日のジンバブエとの練習試合後、一部の主力選手が体の重さを訴えたが、体調面の不安は杞憂(きゆう)に終わった。先制点を挙げた後は前線から激しいプレスをかけ、後半終了間際も再三のパワープレーによる猛攻を粘り強い防御でしのぎきった。
昨年9月のオランダ戦では、前半からハイペースでボールを追いかけたが、後半はスタミナ切れ。立て続けに3失点を喫した苦い記憶がある。1次リーグ突破に向けて大事な19日のオランダ戦。そのときとは違う姿を見せつけるにはうってつけの相手だ。
(2010年6月15日 産経新聞

「走り勝ち(by産経新聞)」かどうかは「勝敗」によって決まることである。
勝敗の如何によっては、「無駄に走った」と酷評されてしまう可能性もある。
「走行距離」と「勝敗」の関係に一定の傾向が見られるのは大変興味深いことだが、走行距離や勝敗という「情報」とその「情報化プロセス」との階層差にある「本質」をしっかりと読み解く必要もある。

昨今、スポーツやトレーニングに関する数値化された情報(データ)が氾濫しているが、その量的データの裏にある意図や意識、得られた感覚や感触といった質的な「情報化プロセス」については「情報化」されにくいという側面がある。しかし、「情報」の本質というのは、「情報と情報化の階層差」にこそ存在し、科学的データという「情報」も、その「情報化プロセス」と付け合わせてはじめて意味を帯びてくる。そのような情報を、選手が自身の腑に落とそうとするとき、最終的な拠り所となるのは自身の身体感覚(身体知)であるといえる。
(拙稿「陸上競技男子400mハードル走における最適レースパターンの創発:一流ハードラーの実践知に関する量的および質的アプローチ」トレーニング科学 第20巻3号より)

スポーツデータの分析と配信を行う「データスタジアム」の会長兼エグゼクティブディレクターである森本美行氏が、W杯カメルーン戦の数時間前に興味深い論考を寄せている。

勝敗も大事だが、結果だけがすべてではない。より重要なのは、強化試合で試そうとしたことをどれだけ実行できたか。そして試合で実行できなかった点や新たに見つかった問題点を、本番に向けていかに修正するか、だ。(…)
アジアと世界との違いを如実に物語るデータがある。それは、英語で「アクチュアルタイム(Actual time)」や「ボール・イン・プレーヤーズ(Ball in players)」と呼ばれるデータだ。
具体的には、90分余りの試合時間のうち、セットプレーの前にボールをセットしたり、接触プレーで倒れた選手に応急処置を施したりする時間などを除いた、実際にフィールドでプレーが行われている時間を指す。
このアクチュアルタイムが長いほど、選手の運動量は増す。日本のJリーグや、東アジア選手権などのアジアの代表同士の国際試合では、この時間の長さは50分前後だ。
一方、欧州のプロリーグなどは60分前後。世界最高峰のチャンピオンズリーグともなると、65分前後に達する。
日本から欧州のプロリーグに移籍した選手がすぐに活躍できない原因の1つが、ここにある。アクチュアルタイムが10分以上長い試合にフル出場できるだけの“ゲーム体力”が十分でなく、適応するまでに時間がかかるのだ。
実際、日本人選手の中では抜群のフィジカルを誇った中田英寿稲本潤一川崎フロンターレ)といったプレーヤーでさえも、欧州にわたった当初はフル出場できない試合が多かった。
日本代表がアジアのほかの国の代表と対戦した場合、日本代表のボール支配率は60%以上に達することが多い。単純に考えれば、日本代表は、50分というアクチュアルタイムの6割に当たる30分は攻勢に立ち、守勢に回るのは20分だけということになる。
これらの数字は、世界の強豪チームと対戦すると一変する。
相手が主導権を握り、日本代表のボール支配率は4割程度まで低下する。その結果、日本は、世界の強豪と対戦した場合のアクチュアルタイムである60分の6割に相当する36分は守勢に追いやられ、攻勢に転じる時間は24分にとどまる。
つまり、守勢に立たされている時間だけを単純に比較すれば、アジアでの試合に比べて1.8倍と、約2倍も長くなるわけだ。
当然のことながら、マイボールの時より相手ボールの時の方が、体力的にも精神的にも消耗は激しい。そうした時間が長くなれば、戦い方を変えざるを得ない。たとえチームの戦術コンセプトは変えずに維持するとしても、相手に応じた修正は必須だ。
実際、日本代表の岡田武史監督は、イングランド代表、コートジボワール代表との2試合で、それまでとはフォーメーションを変更して戦った。
イングランド戦では、4人のディフェンダーの前に、守備に専念するミッドフィールダーを1人置き、「4―1―2―3」と岡田監督自身が称したフォーメーションを採用した。
一方、コートジボワール戦では、ディフェンダーの前に配置する守備的ミッドフィールダーを2人に増やし、1トップの後に攻撃的ミッドフィールダーを置く「4―2―3―1」というような布陣を取った。
このように世界レベルのチームを相手に、どのような選手の配置が日本の戦術コンセプトを発揮するために有効かをテストしたわけだ。
だがメディアの多くは、フォーメーションの変更を“変節”と見なし、「岡田監督の信念はぶれている」と批判した。だが、これ違うと思う。
フォーメーションを変更したのは、あくまで世界レベルの相手に応じて行った選手配置の修正だ。「ボールへのプレッシャーとシンプルなビルドアップというコンセプトは変わっていない」と岡田監督自身が語っているように、信念は少しも揺らいでいないと私は見る。
こう頭を整理したうえで、2つの試合をデータから振り返ってみよう。
ポイントは、相手にボールを6割支配される劣勢の中で、いかに大量失点を防ぎながら、少ないチャンスを生かして得点を挙げるか、だ。
この点でイングランド戦は、大方の評価の通り、岡田監督の試した戦術が機能していた。(…)
ボールの保有率はイングランドの58.8%に対して日本は41.2%。まさに想定通りである。
一方、シュートの本数は、イングランドが22本、日本は12本。試合を観戦していた読者の中には、日本の12本というシュート数は「意外に多い」と感じる人もいるかもしれない。
ここで注目したいデータがある。相手からボールを奪ってからシュートを打つまでの平均時間だ。日本の8.1秒に対して、イングランドは18.7秒もかかっている。
このデータの意味するものは何か。それは、イングランドはパスやドリブルでボールを動かしはするものの、決定的なチャンスをなかなか作れず、最後は苦し紛れにシュートを打つというパターンが多かったということだ。
これは、相手がボールを保持している時に日本が実践した戦術が機能した証しと言えよう。サイドからのクロスをディフェンダーがクリアミスして生まれた2つのオウンゴールの場面にしてもそうだ。
確かにイングランドがサイドにボールを展開する前の局面では、日本の守備にポジションのミスがあったり、1対1で相手に対する寄せが甘かったりした。しかし、相手の選手がフリーでゴール前に入り込んでいるような状況ではなく、ディフェンダーがボールに触らなければ、失点することはなかっただろう。
一方で、8.1秒という日本の数字からは、相手から奪ったボールをゴール付近まで素早く運び、シュートにつなげていたことが分かる。
このように、1―2というスコアからではなく、オランダ代表やデンマーク代表に対して用意した戦術が機能したという理由から、この試合では良好なシミュレーション結果を得ることができたと言える。
では、コートジボワール戦はどうだっただろうか。ボールの支配率は、やはりコートジボワールが日本を大きく上回った。
後半の開始と同時に、岡田監督は3人の選手を一気に代えたので、後半は控え選手を試すと割り切り、本番のカメルーン戦を想定した戦い方は前半だけに絞ってテストしたと見るべきだろう。
前半だけに限ると、シュートの本数はコートジボワールの6本に対して日本は4本だった。ここでまた、マイボールにしてからシュートまでの平均時間を見てみよう。
結果は、コートジボワール19.2秒、日本17.5秒と、両チームとも長い。これは、お互いにパスを回し合う展開になったからである。実際、このゲームでは両チームとも、自陣でパスを回す比率が高かった。
見方を変えれば、コートジボワールは日本のボールホルダーが自陣に進入してくるまではチェックに行かず、自由にボールを持たせたと言える。
それでも前半で4本。後半を合わせても8本しかシュートを打てなかった。これは、相手の守備がきちんと陣形を整えて“ブロック”を形成した場合には、やはり簡単にはシュートまで持っていけないこと、さらに言えば、相手の守備がブロックを形成する前に素早くシュートまで持ち込むというプランが実行できなかったことを意味する。
そこで岡田監督は、カメルーン戦用の戦術やそれを実践するメンバーを修正する必要を感じたようだ。コートジボワール戦の後に、4人のディフェンダーの前に守備的ミッドフィールダーを3人並べる「3ボランチ」を練習したり、南アに入ってからジンバブエ代表と練習試合を行ったりした。
岡田監督の当初のシナリオを崩したコートジボワール──。事前の想定を上回ったのは何だったのか。それはデータで分析するまでもなく、テレビで観戦していた人の目にも焼きついたであろう選手たちのフィジカルの強さ、そして相手に当たられた状態でのボールさばきのうまさである。
ファーストコンタクトでいともたやすく日本選手の体勢を崩しボールを奪い取る。そんなシーンが数多く見られた。私は、試合が行われたスイス・シオンのスタジアムで観戦したが、コートジボワールの選手たちの屈強な体と技術の高さには目を見張らされた。
コートジボワール戦の終了直後の記者会見で、岡田監督はこう語った。
「前半、守備はそこそこ計算できたが、マイボールになってから怖がってしまった。後半はよくなったが…。こういう相手に戦える選手、戦えない選手がはっきりした」
このコメントは、後半に交代で入った控え選手の中に、コートジボワール代表のフィジカルの強さを苦にしないプレーヤーがいたことを示唆する。
私の目から見ても、普段は欧州でプレーしている長谷部誠(ドイツ・ウォルフスブルク)、森本貴幸(イタリア・カターニア)や、欧州経験の長かった稲本といった選手は、フィジカルの強い相手への対応が巧みだった。(…)
いずれにしても、結果だけにとらわれず、そこに至ったプロセスをしっかりと検証し、問題があれば修正することが大切だ。
(2010年6月14日 日経ビジネスオンラインW杯初戦、直前3連敗でも揺るがぬ岡田監督の信念 戦術を貫くための修正は、“変節”ではない」より抜粋)

これらの「情報」を知った上で、今一度冒頭の本田選手のコメントを読むと、一読しただけでは見えなかった新たな「情報」が行間に浮かび上がってくる(ような気がする)。
このような手続きを、等閑(なおざり)にしてはならない。
いずれにせよ、岡田監督と選手達には、「行蔵は我に存す、毀誉は他人の主張、我に与らず我に関せずと存候(by勝海舟)」の精神で、明日のオランダ戦に臨んでもらいたい。