日本陸連ハードル合宿 in Loughborough

moriyasu11232010-03-08

男子400mHの若手選手達が、ラフバラ大学にて合宿中(小生は国内待機!?)。

通常の日本の考えでは,暖かいところでのトレーニングでしょうが,若手を中心にした男子ヨンパーチームは,もう少し基本的な練習が必要です.
暖かいところでは,そのあたりのごまかしが出てしまう事もありますので,あえて涼しい?寒いイギリスに来ての合宿です.
気候や施設,生活などが全て整った環境での鍛錬が必要なときもありますが,それが全てではありません.
全てがパーフェクトでないところに身を置くことによって,自分自身を見つめ直すことが出来ることも鍛錬の一つと考えています.
少しずつこのような考えが薄れていく世の中でありますが,私自身はこのようなことが,ある程度成熟した競技者にとっても必要だと思っています.(…)
今週はところどころ,男子400mのオリンピックや世界選手権ファイナリストと一緒に走り込みなどをしました.
木曜日は芝生での75秒間走を3本5分休息で行いましたが,最後はついていけませんでした.44秒台の選手との差を目の当たりにして来週は再チャレンジです.
この日は,午前ウエイトトレーニングと補強トレーニングをし,午後からハードル技術練習をしました.
そこに,05年,07年世界選手権チャンピオンのエナ・ローリンソン(オーストラリア)が,私たちの練習を見に来ました.
エナのコーチをしている夫のクリス・ローリンソンは,400mHで世界選手権で入賞している旧友です.
そのようなつながりで,日本のハードル技術には興味を持っています.イギリス人は走り,日本人は技術といったお互いを認め合って練習しています.
(2010年2月27日 山崎一彦のたわごと「男子ヨンパーチーム,世界チャンピオンに指南!」より抜粋)

「全てがパーフェクトでないところに身を置くことによって,自分自身を見つめ直すことが出来ることも鍛錬の一つ…」
さすがは部長、間然するところがない。

失敗学のすすめ (講談社文庫)

失敗学のすすめ (講談社文庫)

(「技術」や「組織」が成熟期を経て衰退へ向かうという)この厳しい宿命を乗り越えるためには、新しい技術、新しい組織をつくる形で古いものとの置き換えを行わなければなりません。衰退の段階までに新しい萌芽をつくり、次の文化を築かないことには、その組織の未来はないのです。
若い社員たちの使命は、大きく分ければふたつあります。ひとつは今後、封印を守り続けること、そしてもうひとつは、封印が解かれるまでに、新しい封印技術の開発をしておくことです。
(by畑村洋太郎氏)

部長メールによると「走る練習は一緒に混ぜてもらい、あとは私たちで行うスタイルをとっています。イギリスの方は400m系ということもあり、結構ボコボコにやられています。」とのこと…
日本の若手選手達は、イギリスで「ボコボコ」にされながらも、新しい「封印技術」の開発に向けた取り組みを進めているようである。
ところで、クリス・ローリンソン(Chris Rawlinson)。
懐かしい名前である。

Christopher ("Chris") Lee Rawlinson (born: 19 May 1972 in Rotherham, England) is an all-round athlete who has made his name as a 400 m hurdler.(…)
After trying the pole vault, decathlon and 110 m hurdles in his early career Chris has found the gruelling 400 m hurdles to be his number one event.
A graduate of Loughborough University, Chris holds the world record of 34.48 seconds for the rarely-run 300 m hurdles, which he set at Sheffield, England on 30 June 2002.
In July 2004 he ranked third on the United Kingdom all-time list for the 400 m hurdles with a time of 48.14 seconds, set in 1999 at Zurich, Switzerland. He is the UK record holder for the rarely-raced 300 m hurdles.
In the build-up to the 2004 Summer Olympics in Athens, Greece, Chris was ranked number five in the world by the IAAF.
Rawlinson retired from competitive athletics at the end of 2005 at the age of 33.
He married Australian athlete Jana Pittman on 31 March 2006.
Rawlinson is planning to come out of retirement in 2009, to run for Australia.
(extract passages from the article of Wikipedia

さあ!中高生のみんなも訳してみよう!(読んでないか…)

In April 2009 it was announced that Pittman and Rawlinson has separated after three years of marriage and in May 2009 she returned to training under Craig Hilliard who had previously coached her. In an interview on 24 October 2009 her new role as a single mother was described as "Jana's toughest hurdle"
In January 2010 it was announced that Pittman had been reconciled with Rawlinson and that they would remarry.
(extract passages from the article of Wikipedia

部長ブログでは「夫」となっているので、恐らくは再婚されたのだろう(おめでとう!)
ほれたはれた的芸能ネタにはいささかも興味はないが、海外のコーチと選手の多様な関係についてはとっても関心がある。
ちなみにヤナ・ローリンソン(ピットマン)は、2003年パリ大会(53.22:PB)と2007年大阪大会(53.31:SB)のチャンピオンである(部長、訂正よろしく)。

男子の方は400m北京五輪入賞者のM.ルーニーや,世界選手権入賞者のD.ギリックなどと,200m3本2セットを90秒リカバリーで行いました.
最後の1本は・・・
ビデオに収まりきれないくらい...みんな小さくなって...
こんなに離れてしまいました...(注:冒頭写真)
速さは23秒から24秒台で2セット目から力の違いを見せつけられました.
敗因は,アウェーであるための対処が出来ていないこと.
ほとんどの選手がイギリス人のいいなりに動いてしまうこと.そのため要領を得ず,常に後手後手の行動に走ってしまうこと.
また,外国人とのリズムや自身でつくる「あいつらは速い」といった先入観にとらわれてしまって,走りの効率性を欠いてしまったこと.
または,そもそも練習が弱いこと.
これらが推察されます.
経験によって,様々な状況を排除してくことが出来ますが,あとは自身がそれらの方法について気付けるのか,否か.
少なくとも日本に帰って,日本人と走るのが楽になると思いますが,それらより上を見て欲しいと思っています.
(2010年3月2日 山崎一彦のたわごと「イギリス練習風景1」より抜粋)

ハードル合宿 in 福岡にて行ったヒアリングで、吉形政衡選手が興味深いコメントをしていた。
吉形選手は、現在の課題が『海外の長身選手と走るときに12〜13歩のリズムに惑わされてリズムが狂う』ことであり、今年の目標は『自分より歩数の少ない(ストライドの大きい)選手に惑わされない「自分のリズム」を確立すること』にあるという。
また、『(最初にイギリスに行ったときは)自分よりも持ちタイムが遅い選手達にも体格等での威圧感を感じ、練習でも負けたりしていた』が、『一緒に練習していくなかで徐々に周囲が見えるようになり自信もついていった』という経験から、今回のイギリス合宿の目的として『精神面のさらなるレベルアップ』を挙げていた。
これらの課題の解決策は、自分よりも速い、そして自分と特性の異なる選手達と一緒に走る経験を積むこと以外にはないだろう(「オレは強い」とか念じてもたぶんムリ…)。
まさに「習うより慣れよ」である。
さらに、『(イギリス合宿の経験から)レストが単なる「休息」ではなく、トレーニングの「流れ」の中にあることが分かってきた』とのこと。
彼方(イギリス)の練習は、「75秒間走を3本5分休息」「200m3本2セットを90秒リカバリー」など、此方(日本)のに比べて走行間のレストが恐らく短い。
このレストが30秒長短するだけでも、トレーニング刺激は大きく変わるのである。
「トレーニングの流れの中にあるレスト」
大変重要な指摘である。
日本男子ヨンパー陣が、異文化のなかで自分自身を見つめ直し、どのような変化を遂げて帰国するのかとっても楽しみである。