アジア選手権直前調整合宿

moriyasu11232009-11-10

今日から14日まで、中国・広州にてアジア陸上競技選手権大会が開催される。
この大会は、1973年から2年に1回開催されており、日本では1979年と1981年に東京、そして「1998年」に福岡で開催されている(計算が合わない…)。
先週、NTCにてブロックごとに標記合宿が行われる。
5日夜には、ハードルブロックのミーティングにてプレゼンテーション。
参加者は、アジア選手権に出場する男女計4名の400mH選手プラス富士通T選手(110mH)、Yハードル部長、K副部長、Sテクニカルコーチ、そして110mH日本記録保持者である筑波大学Tコーチ、と手強い人?ばかり(むむむ…)。
内容は企業秘密(嘘)。
世界記録および歴代日本記録のレース映像や、 過去の指導者講習会などの内容をリバイスした資料をもとに、日本男子400mHの「技の伝承(byアルビレックスK選手)」についての解説をさせていただく。

(トレーニング理論の本は)たとえば料理の本のように、どのページから読んでも必要なお膳立てが整えられている、といったように配列することは無理である。適切な方法上の助言をしようとするとき、科学的根拠に基づいて、事の本質を理解してこそ、それを正しく実際に取り入れることができる
(byザチオルスキー氏)

本来「科学的トレーニング」とは、トレーニング効果を最大限に引き出すために「心・技・体」のあらゆることが「綜合的」に考慮されたトレーニングのことを指すのであり、そこで考慮されていることの多寡とその優先順位付けの妥当性がトレーニングの「科学性」を決定づける、というようなお話しをする。
その後、選手やスタッフからの質問やコメントをきっかけに、大変マニアックなディスカッションが展開される。
ミーティングの散会は21時半だったが、なぜか布団に入ったのは丑三つ時(2時半過ぎ)…
また7日夜は、中距離ブロックのミーティングにも参加。
夕食前には、全体ミーティングとしてアジア選手権代表選手および学生&ジュニアの強化指定選手が一堂に会し、強化スタッフ(アコムHコーチ)から強化方針、強化指定基準およびサポート内容についての詳細が説明される。
また夕食後に行われた若手(高校生&大学1、2年生)対象の研修会では、筑波大学Kコーチからの各選手のレースパターン紹介に始まり、選手自身による成功&失敗の要因分析や目標設定についての発表&ディスカッションが展開される。
さらに強化スタッフから、今年の中距離(特に800m)のレベルを劇的に引き上げ、かつ日本記録更新にもつながった要因のひとつとして「ペースメイキング」の洗練化が挙げられ、実際にペースメーカーを務めた二人の学生選手から、その効能についての大変興味深いコメントを引き出す一幕もあった。
最後にH中距離部長から、「今後はNTCでの合同合宿やペースメーカーつきのレースを計画的に実行していく中で、若手とシニアの交流の相乗効果を引き出しつつ、全体の底上げを図っていきたい」とまとめられて散会。
閑話休題
選手や指導者は、試合でのパフォーマンスや日々のトレーニングで知覚されている「事実」すなわち「現実の世界で実際に観測されている事実・事象」をもとに、「仮説」すなわち「頭の中で考えられた検証される前の理論」をたててトレーニングを進めていく。
そして、頭の中で考えた「仮説」の妥当性を、トレーニングや試合でのパフォーマンス(事実)とつけあわせつつ検証するという作業の繰り返しによって、「実証された事象間の関連(こうすればああなる)」としての「理論」が構築される。
換言すれば、確固たる「事実」の裏づけがあり、かつこの「理論」に基づいて「事実」が起きていると多くの人に、あるいは自分の中に確信として顕れたものが『(科学的な)理論』ということになるのである。
もちろんこの「理論」は、「信じつつ疑う」という矛盾した作業の中で、より洗練化していく必要がある(でないとパフォーマンスは高まらない)。
NTCなどで行われる「合宿」は、「(科学的)事実」を再認識し、他者と自分の「仮説」を照らし合わせながら、「自分なりの(科学的)理論」を再構築するきっかけ作りの「場」として、極めて有効なものになりうると確信した。
選手&スタッフの皆様、お疲れ様でした(アジア選手権の健闘を祈ります)。