賀茂金秀

moriyasu11232009-11-05

少し前に、九州本部氏の愛弟子T君から、広島県は西条のお酒を頂戴する。
今年、とある学会で訪れるまで知らなかったが、西条は全国的にも有名な酒どころなのだそうである。
この「賀茂金秀」は、広島県賀茂郡で5代続く金光酒造という蔵元が、2003年4月に立ち上げたブランドである。
この酒造は、もともと年間製造量300石という小規模で普通酒を中心に造っていた蔵元であるが、この状況を変えようと一念発起したのが5代目の金光秀起氏である。
秀起氏は、東京農大醸造学科を卒業後、小規模な酒蔵であるからこそ品質重視の少量生産に徹すべきと考えて独力で吟醸酒造りにチャレンジする。
数年間の試行錯誤を経て、ようやく納得できるレベルの純米酒純米吟醸酒を造れるようになる。
そして、大胆にもこれらの酒を「新規取引に至るまでは3年はかかる」と噂される地元有力店に持ち込み、しかもその場で「このレベルならすぐに取り扱ってよい」という高い評価をうける。
その後、全国の市場で戦うための最終仕上げが施され、「賀茂金秀」という名前でデビューするに至る。
経験も浅く吟醸蔵としての基盤が全く無いレベルから、進んで蔵の改造を行ってきた秀起氏の情熱を支えているのは、何よりも「広島の地酒」へのこだわりである。
原料となる米には、広島産の酒造好適米のなかから最高級の「千本錦」を選び、酵母は比較的香りの穏やかなものを使用し、吟醸香の立ち具合も程々に調整されている。
爽やかな香りとほのかな甘み、そして新酒独特の炭酸のようなシュワシュワ感とのバランスも大変によい。
キリッと冷やして飲みたい辛口酒である。
T君、ありがとうね。