北京五輪・男子400mH決勝

moriyasu11232008-08-19


1 Angelo Taylor (USA) 47.25(パーソナルベスト:PB)
2 Kerron Clement(USA) 47.98
3 Bershawn Jackson(USA) 48.06
4 Danny McFarlane(JAM) 48.30(シーズンベスト:SB)
5 L.J. van Zyl(RSA) 48.42
6 Marek Plawgo(POL) 48.52(SB)
7 Markino Buckley(JAM) 48.60
8 Periklís Iakovákis(GRE) 49.96


テイラーが、シドニー五輪以来8年ぶりのPB更新で優勝。
予想通り、USAのメダル独占となった。
レース展開も、ほぼ予想通りのものとなった。
テイラーがスタートから飛び出し、レース前半をリードする。
ジャクソンは、準決勝よりは速い5台目通過であったが、テイラーとクレメントからはかなり遅れを取る(これは織り込み済み)。いつもどおり15歩が合い始める中盤から追い上げを開始するが、05年世界陸上を制したときほどの勢いがなく、思ったほど前の二人と差が詰まらない。大阪世界陸上のときのような、最終インターバルで17歩になりリード脚でハードルを引っかけるという致命的な失敗ではなかったが、やはり10台目の踏切が遠くなり抜き足を引っかけて減速。これがなければ、クレメントは捕まえていただろう。
クレメントは、前半(5台目まで)テイラーにやや遅れをとっていたが、13歩が合い始める中盤で差を詰め、8台目はテイラーとほぼ同時に越える。しかし、8〜9台目は13歩で行こうとするあまり走りが浮いてテイラーに少し水を空けられ、9〜10台目はいつもの15歩ちょこちょこ走りでさらに差が開いてしまう。
ラストの直線の走りが不安定なクレメントは、恐らく8台目通過でテイラーの前にいたかったはず。しかし前半で予想以上にリードされ、追いつくために中盤で力を使ってしまい、直線に出てから思ったほど余力が残っていなかったように見えた。
一方のテイラーは、7台目まで13歩、それ以降を14歩でリズムよく走破した。同等かそれ以上の走力(100m:10.23、200m:20.40、400m:44.48)を持つクレメントとは対照的に、フラットの走力を十分に活かした、ミスのない効率のよいレースマネジメントを展開した。
ハードルを両脚で踏み切れることが、特にレース後半のリスクマネジメントには不可欠であるという当たり前のことに、改めて気付かされたレースでもあった(日本人は普通にやっているが…)。
以上、とある新聞社から電話取材の依頼があり、16日以降の外出スケジュールを調整しつつ在宅していたにも関わらず、うんともすんとも言ってこないことに少々憤慨しつつレースを振り返ってみた。
閑話休題
シドニー五輪以降、しばらくスランプに陥っていたテイラーだったが、昨年は400mでPB(44.05)を樹立し、大阪世界陸上でも銅メダル(44.32)に輝く。
今年は、満を持して400mHに復帰してきたのだろう。
興味深いのは、今季のレース履歴である。
IAAFのサイトを見ると、4月19日に100m(10.58)、5月17日に200m(20.50)、7月14日に400m(45.02)をそれぞれ走っている。ここにはSBしか掲載されていないので、他にも様々な試合に出場しながら調子を整えてきたと思われる(ちなみに北京前の400mHシーズンベストは48.42)。
専門種目外の距離を積極的に走りながら、本番に向けた準備をしていくというのは、あるいは為末選手がもう少し長いスパンでやろうとしていたことと似ているのかもしれない。
大きな試合に向けた中長期的な準備の仕方についても再考する必要がある。