ほんとうに「カロリー」でよいのか?(その2)

moriyasu11232008-12-25

文藝春秋(春秋新年号)に、「農水省 食料自給率のインチキ」という記事が掲載されている。
我が国の農業の現状をあらわす「食料自給率40%」は、実は農水省の予算獲得、省益追求のための統計操作であると糾弾するものである。
その骨子は、農水省が出している「食料自給率」が「カロリーベース」で計算されており、その数字を基にした政策目標は無意味かつ無効であるというものだ。
おお、またもやカロリー…(12月17日参照)
食料自給率の計算方法には、「カロリーベース」と「金額ベース」があるらしい。
一般的に、自給率はカロリーベースの方が低くなる傾向にあるが、農水省が採用している積算方式は、カロリーベース計算のなかでもさらに低くなるという。
農水省方式の概略は、一人当たりの国産供給カロリーを一人当たりの総供給カロリー(国内+輸入)で割ったものだが、総供給カロリーには食べ残しや売れ残りなどの廃棄食料も含まれているという。しかし、本来は分母を真に必要とする総供給カロリー、すなわち廃棄食料の部分を除いた数字にしないと農政の基準値にはなり得ないはずである。
また、国産の野菜は、重量出荷額では8割以上を占めるにもかかわらず、カロリーが少ないために自給率には反映されにくい。さらに、畜産酪農品は、供給カロリーに飼料自給率を乗じて計算されるため、1000頭以上の豚を飼育してハムやソーセージを作る有数の事業者も、飼料が輸入であれば食料自給率への貢献は「ゼロ」になるという「仕組み」である。
実は我が国は、国内農業生産額で堂々世界第五位の「農業大国」なのだそうである(驚)。
加えて、国際的に通常用いられる「金額ベースの食料自給率」は66%であり、これは「世界ナンバーワン」になるという(ちなみに、農水省は金額ベースの自給率国際比較を断固公表しないそうだ)。
これはもう「乳酸は疲労物質ではない!」と知ったときに匹敵するくらいの驚きである(どんだけ〜)。
農水省は、2008年度に17億円もの予算を計上して、国民に対する「自給率向上プロパガンダ」を展開している。全国紙誌に全面広告を打ったほか、芸能人やオリンピック選手まで担ぎ出して、国民に「飢え」の危機感を煽るメッセージを吹聴している(この作戦の事務局は、最大手の某広告代理店にあるらしい)。
その効果によって、実に9割以上の国民が食の将来に不安を抱き、自給率を高めるべきだと思っている。しかしながら、実はこのようなプロパガンダは、国民の食料輸入増に対する不安を煽るために、農水省が意図的に仕組んだものだというわけだ。
目的は言うまでもなく、農水省、農協およびその天下り団体が労せず生き残るための予算の維持・拡大にある。
その決め台詞が「コメの自給率100%」である。
コメを作っても売れない、売れないので減反せざるを得ない、だから金をくれという「タカリ」の論理である。
その隠れ蓑が、すなわちカロリーベースの「食料自給率」なのである。
「成人男性に必要とされる摂取カロリー」が「正しい」という保証はどこにもない(12月17日参照)。
農水省方式では、食料輸入を「ゼロ」にすると自給率が「100%」になる(おおシンプル)。
一度、食料輸入を全て凍結し、「自給率100%」とはどのような状態なのかを経験してみるのも悪くない。
少なくとも、メタボは解消されそうである。
そして、スポーツのパフォーマンスも多少上がるかもしれない。
なにより、もう少し食物を大切にする国になるだろう。
めでたしめでたし。