為末大見参!

moriyasu11232010-04-03

3月24日、為末大氏(APF)の講演会&対談コーディネーターを務めるため京都教育大学に赴く(写真はご本人&学長・副学長先生ほか)。
京教大では、Lasbim後輩E氏が中心となって「学校運動部活動指導者資格」の認定システムを立ちあげることになり、その学生ガイダンスのために企画されたイベントである(なんとぜいたくな…)。
ちなみに、我が職場の指導者育成事業における「基礎資格(スポーツリーダー)」と連動させていくことになるようである。
教職を志ざす学生を対象とした指導者資格認定システムのガイダンスなので、指導者(コーチ)をテーマの中心に据えつつ、小学校で陸上を志してから、中学校の驚異的な身体能力の早熟と指導者の影響、高校での現実直視と種目選択、大学以降の選手・コーチ兼任?…といったプロセスについて、様々なエピソードを交えながらの講演&対談(各1時間程度)をして(させて)いただく。

講演の冒頭、聴衆へのお願いとして「能動的に聞いて欲しい」と強調される。
「能動的に聞く」というのは、前のめりになって一言も漏らさぬように聞くことではない(そういう意味もある)。

できそこないの男たち (光文社新書)

できそこないの男たち (光文社新書)

口、食道、胃、小腸、大腸、肛門と連なるのは、身体の中心を突き抜ける中空の穴である。空間的には外部とつながっている。私たちが食べたものは、口から入り胃や腸に達するが、この時点ではまだ本当の意味では、食物は身体の『内部』に入ったわけではない。外部である消化管内で消化され、低分子化された栄養素が消化管壁を透過して体内の血液中に入ったとき、初めて食べ物は身体の『内部』、すなわちチクワの身の部分に入ったことになる。
(by福岡伸一氏)

食べ物が胃や腸に達してもなお身体の「外部」にあるのと同様、鼓膜の振動という「音」としての「言葉」を、チクワの「内部」すなわち「身体」に浸透させるためには、さらに一手間も二手間も必要となる。
「能動的に聞く」というのは、言葉のひとつひとつを咀嚼し、飲み込んだ言葉が食道を経由し腑(はらわた)に落ちて消化吸収できるかどうか、全身全霊で傾聴せよという大変厳しいリクエストなのである。
氏のブログには、指導者(コーチ)に関する記述が散見されるが、以下、備忘録的に主だったものにリンクを貼らせて頂く。
指導論育つという事常識コンプレックスコーチング論選手と指導者指導者とコーチ
氏の深遠なる競技観、というよりも人生観(死生観)が垣間見えた、文字通りあっという間の2時間であった。
帰りの新幹線でも、あらゆるテーマでの話は尽きなかった、というより質問攻めにしてしまった(休ませなくてスマン1)。

『陸上の為末、若手選手支援で基金設立を計画』
陸上の世界選手権男子400メートル障害で2度銅メダルを獲得した為末大(31)(APF)が、生計に困っている若手選手に資金援助などをする非営利団体「アスリート・ソサエティー(仮称)」の設立を、競技の枠を超えたトップアスリートとともに計画していることが24日、明らかになった。
現役の選手たちが集まり、次世代の若手を支える組織を創設するのは初の試み。今後賛同者を増やし、5月の設立を目指す。
スポーツ界は長引く不況の影響で経済環境が厳しく、競技によってはアルバイトをしながら五輪を目指す選手もいる。こうした選手を助けようと立ち上がった。
構想では、現役または元選手らが1人3万円ずつ出し合って団体を設立。企業や団体、個人から集めた寄付を基に、支援金として当初は若手1〜3選手に1人約200万〜400万円を貸し出す。受け取った選手が五輪などに出場した場合や、小学校訪問など規定した社会貢献を行えば、返済額を減額する方針。また、現役トップ選手のために勉強会や交流会を開く。
為末は「『頑張りますから、お金下さい』だけでなく、まず選手自らがお金を出し合ってから、協力を求める方が社会に納得してもらえるはず」と話している。
(2010年3月25日 YOMIURI ONLINE

あのあとも忙しかったのね…(休ませなくてスマン2)
人間は、老若男女を問わず、常に「なりたい自己」と「なれる自己」の大きさや形を変えながら、そのオーバーラップする部分を模索している生き物である。
その模索の過程には、様々な労働や文化と呼ばれるものがあり、そのひとつにスポーツがあるのだろう。
ガンバレ大さん!(まずは寄付だな…)