罰するということ

moriyasu11232009-04-20

日体大 箱根シードはく奪に異議「陸上部員400人が連帯責任理解できない」』
 男子陸上部員(既に退学処分)が合宿所で大麻事件などの不祥事を起こした日体大が17日、関東学生陸上競技連盟に下された厳罰処分に対し徹底抗戦の構えを見せた。同学連は、3か月の主催大会出場停止と今年の箱根駅伝3位で獲得した来年大会のシード権はく奪などの処分を発表。これに対し「陸上部員約400人が連帯責任を受けるのは理解できない」などとした4項目の質問書を提出。回答が出るまで処分には応じない方針だ。
 日体大が学連の処分に猛反発した。
 元陸上部の男子跳躍選手が横浜・健志台の合宿所で起こした大麻及び偽札所持などの不祥事に対し、同学連はこの日、部全体に「6月末までの3か月の学連主催大会の出場停止」「箱根駅伝のシード権はく奪」「出雲(10月)、全日本(11月)の各駅伝の推薦取り消し」「関東インカレの2部降格」などの処分を発表。日本学連主催大会の出場自粛も勧告した。吉儀宏副会長は「合宿所での反社会的行為は極めて重大」と、厳罰の理由を説明。
 この発表を受け、日体大は落合卓四郎学長ら幹部が対応を協議。3月の不祥事発覚後、大学では当該学生の退学、石井隆士部長ら指導者の解任、当該学生が所属する男子跳躍(棒高跳び及び幅、三段跳び)ブロックの無期限活動停止などの処分を行った。その上でさらなる厳罰が下されたことに反発。「大麻事件はまだ起訴されていない」「連帯責任について理解できない」などとして4項目にわたる質問書を関東学連に提出。回答を受けた後に裁定について検討することになった。
 特に3か月の出場停止は、学生の単位取得にもかかわる問題だ。日体大は「専門実技」であるクラブ活動も1つの授業と位置づけて単位を認定。4年生にとっては必修科目でもある。陸上部は昨年度、種目ごとの8ブロックに370人が所属する大所帯で「3か月の出場停止処分は、履修科目を決めた多くの学生が不利益を被る可能性がある」と大学側は話した。
 関東学連の幹部は、日体大側の反応に「送付したとの報告は受けたが、まだ文書を確認していないので何とも言えない」と話すにとどまった。
日体大の反論の骨子】

  1. 大麻、偽札の件はいずれも現状では立件されていない。
  2. 当該学生を既に退学処分としたのに、約400人の部員に加え新入生にも連帯責任を負わせることは理解できない。
  3. 当該学生が所属した男子跳躍部門は無期限活動停止などの処分を下し、部長ら責任者を解任したにもかかわらず、部全体が処分の対象になったのは理解できない。
  4. 出場禁止期間を「3か月」とした根拠は何か。また、同期間後に行われる箱根駅伝など3大駅伝にペナルティーを科すのはなぜか。

(2009年4月18日 スポーツ報知)

日体大関東学連に対する質問書は、いちいち尤もな疑問であると感じる。
無論、学連にも、競技連盟という統轄組織としての「立場」がある。
その学連が出した今回の処分は、可能な限りの議論を尽くした上での結論であったはずである。
そして、その議論は、陸上競技を志す多くの学生のその後にとって最も適切かつ妥当な対応とは何か?という点に照準されていたに違いない。
よって学連は、その尽くした議論の内容や処分の根拠について、情理を尽くして説明する必要があるだろう。

選手をして規律に服せしめるためには,それに必要な環境を彼らのために作ってやることが必要であると思う。それを怠っておきながら,むやみと選手の不規律を非難したり,不規律の罪を国民性の欠点に帰せんとするがごとき議論をきくのははなはだ遺憾である。(…)
次に選手をして心からその所属団体の統制に服せしめるためにはその団体が真にデモクラチックに組織されていることが必要である。選手をしてその所属団体を彼らみずからの団体であると思わしめるように団体それ自体を組織する必要がある。団体幹部が官僚化して自分らの都合だけから割り出した計画によってみだりに選手を動かそうとするようなことを企てれば,選手が心からその統制に服しないのは当然である。(…)
最高の人の意思が最も速やかに最下の人々に伝わり,最下の人々の意思がまた最も速やかに最高の人に伝わるような組織を作ることが,統制と規律とを実現するに必要な最も重要な条件である。この重要事を忘れてみだりに規律を要求する統率者は必ず失敗すると私は考えている。(…)
(末弘嚴太郎「スポーツ漫筆(選手と規律)」より)

他に厳しい処罰を課すということは、それを課す側にも応分の責任と義務が派生するものであることを忘れてはならない。