ベルリン世陸・男子400mH決勝展望

moriyasu11232009-08-17

Lane1 Danny McFarlane(JAM) 48.49(1組4着)
Lane2 Jehue Gordon(TRI) 48.77(1組5着)
Lane3 Kerron Clement(USA) 48.00(SB:1組1着)
Lane4 Felix Sánchez(DOM) 48.34(SB:1組2着)
Lane5 Bershawn Jackson(USA) 48.23(2組1着)
Lane6 David Greene(GBR) 48.27(PB&SB:2組2着)
Lane7 Periklís Iakovákis(GRE) 48.73(2組3着)
Lane8 Javier Culson(PUR) 48.43(1組3着)
※準決勝記録および着順

昨年の北京五輪王者テイラー(USA)の予選敗退という番狂わせと、今季48秒台前半を連発し好調が伝えられていたフィリップス(JAM)および今季世界ランク1位(47.94秒)でベルリン入りしたバンジル(RSA)らの準決勝敗退によって抜け出でてきたのは、ゴードン(TRI)、グリーン(GRE)、そしてクルソン(PUR)といえるだろうか。
2レーンのゴードンは、17歳の新鋭(なんとジュニア選手)である。昨年の世界ジュニア選手権では準決勝で敗退(52.26秒)し、2008年のSBは51.39秒。この驚異的な記録更新の背景には、一体何があるのだろうか(うう、知りたい…)。準決勝までにかなり力を使っている感もあるが、1日空けての決勝に若さと勢いを持ち込めれば面白い存在になるだろう。
とはいえ、メダル争いは、ほぼシードレーンの選手に絞られたといってよい。
なかでも金メダルの最有力候補は、3レーンのクレメント(USA)といってよいだろう。
クレメントは、2005年の全米選手権でいきなり47.24秒(オール13歩)をマークし、そのポテンシャルの高さを世界にアピールしたが、世界王者の称号を得るまでに約2年の歳月(2007年大阪世陸)を要した。
全米選手権のようなイーブンペース型のレースを続けていればそうそう負けることはなかっただろうが、更なる記録更新を目指して?前半の入りを速くしたことにより、ラストの直線で著しく速度を低下(15歩のちょこちょこ走り)させてしまう欠点?が生じ、しばらくの間それを修正できずにいた(優勝した大阪世陸でもやっていた)。
しかし、今回の走りを見る限り、前半から中盤にかけての走りもより洗練され、最後まで13歩で押し切るレースパターンを確立しつつあるようだ。さらに高速化するであろう決勝の流れの中で、予選、準決勝と同様に最後まで13歩で走破するレースマネジメントができれば、優勝はほぼ間違いないと思われる。
4レーンのサンチェス(DOM)は、為末大選手が銅メダルに輝いたエドモントン世陸(2001)で初の世界王者に輝くと、以降パリ世陸(2003)、アテネ五輪(2004)まで連戦連勝。
しかし、2005年以降はケガをきっかけに不振に陥り、為末選手が二度目の銅メダルに輝いたヘルシンキ世陸(2005)では、決勝のスタート直後に脚を引きずり途中棄権する痛々しい姿が世界中に配信された。
大阪世陸(2007)では銅メダル(48.01秒)に輝き復活をアピールするも、昨年の北京五輪では51秒かかって予選敗退。大きなケガを経験したベテラン選手のコンディショニングの難しさは言わずもがなであるが、きっちりとSBで勝ち上がってくるところは、さすがにベテランである。今回の予選、準決勝のレースを見る限り安定感のある走りは健在で、アメリカ2人の走り如何によっては一番良い色のメダルも視界に入ってくる(為末選手も、おそらく彼を応援しているハズ)。
5レーンのジャクソン(USA)は、2004年のWAFに優勝(47.86秒)、その余勢を駆った翌年のヘルシンキ世陸では、ラストの直線における驚異的な追い上げにより47.30秒の好記録で世界王者となる(H8-Fの区間タイムは、為末選手の14.75秒に対してジャクソンは13.71秒)。
大阪世陸(2007)の準決勝では、いつものレースパターンで中盤から徐々に追い上げ、決勝進出はほぼ間違いないと思われた瞬間、10台目のハードルをリード脚の踵で引っかけバランスを崩すという「まさかの失速」で準決勝敗退となる。
昨年の北京五輪では、同じアメリカのテイラー、クレメントとともに表彰台を独占。往年のキレは少し影を潜めつつあるが、全米選手権の覇者、すなわち400mH王国の柱として今季世界ランク2位のSB(47.98秒)をひっさげ、着実に決勝にコマを進めてきたところはさすがである。
なんとも不気味なのは、6レーンのグリーン(GBR)である。昨年まで49.53秒がPBでほとんど国際的な実績のない選手であったが、今年に入って大幅に記録を更新し、一躍世界の檜舞台に躍り出てきた。予選、準決勝いずれも、世界大会に初参加とは思えない落ち着いたレース運びを見せており、まだまだ余力を残しているようにもみえる。外レーンのイアコバキス(GRE)あたりに上手く引っ張られながら流れに乗れれば、表彰台もみえてくるだろう。
男子400mH決勝は、日本時間の19日早朝(3:50am)スタートである。
お見逃しなく!