ゴールデンゲームズ in のべおか

moriyasu11232009-06-02

日本陸連中距離強化指定選手の動作解析とレース分析を行うために、29日夕刻に延岡入り。
ホテル到着後すぐに競技場に赴き、翌日800mの先導役(ペースメーカー)を務める学生陣の最終調整をチラ見しつつ、動作解析用のマーキングおよび撮影場所の確認。
ペースメーカーの学生達は、かなり緊張している様子である。
日本記録世界陸上の標準記録を狙うことを目的としたレースを引っ張るというのは、並大抵のプレッシャーではないだろう。
レース時間帯となる19時頃には、少し吹いていた風もやんで絶好のコンディションになる(明日も頼むぞ)。
ホテルに戻り、翌日の天気予報(3時間予報)を確認すると、ちょうど中距離のレースが行われる時間帯の降水確率だけが何故か「90%(しかも10mm以上)」。ちなみに、その前後は1mm以下で60%…
天気予報が外れることを祈りつつ床につく。
当日の朝、カーテンを開けると外はピーカン。
午前中に、ホテルのロビーでレース毎にペース設定の確認ミーティング。
800mは、100mごとにかなり緻密なペースを設定している。ある選手から「200mの入りをもう少し(0.2〜0.3秒)はやくして欲しい」というリクエストが出る。
選手も気合い十分である。
昼過ぎまでは快晴で「ホントに降るのか?」という感じだったが、ホテルを出るころには少しずつ雲行きが怪しくなってくる(むむむ…)。
会場に到着すると、宗(茂)さんのマイクパフォーマンスとファンキーな音楽、そして観客の歓声と看板を叩く音が混ざり合って会場に響き渡っている(写真はまだ小雨時。写っていないが観客席は超満員)。
これは陸上競技の大会なのか??(ビックリ!)
スタンド最上段の階段に腰を下ろして撮影場所を確保。時折、隣のおばあちゃんと談笑しながら、中距離レースが始まるのを待つ。
少しずつ雨足が強まり、中距離レースが始まる少し前からは豪雨(予報当たり…)。
選手はもちろん、フィールド内で動作解析カメラをオペレートしている筑波大学のKDNコーチや、ラップを読み上げる陸連中距離スタッフの皆さんはずぶ濡れ(私はスタンド屋根下での撮影…申し訳ない)。
今回の参加選手達が、この先あれだけの豪雨の中を走ることは、恐らくないであろう(そのくらいすごかった…)。
そんな悪コンディションのなかで、ペースメーカー役の学生選手たちは十二分にその役割を果たし、選手もまたそれに応える快走を見せてくれた(1500mの小林史和選手は貫録のB標準突破)。
もう少しコンディションがよければ…と悔やまれる部分もあるが、いずれのパフォーマンスも日本選手権での快走を予感させてくれる内容であった。
興味深かったのは、ペースメーカーを務めてくれた学生選手たちが、皆一様に「(レースを外れたときには)まだ余裕があった」とコメントしていたことである。
この「余裕」が、ほんとうに最後まで走りきれるくらいの「余裕」だったのか、途中まで引っぱればよいという役割であればこその「余裕」だったのか…今となっては検証しようもない。
ただ、五感(五官)を総動員して「速すぎず遅すぎずのペースで、決められた場所まで引っ張る」という役割を確実にこなそうとした結果が「余裕」につながったといえそうな気はする。
言い換えれば、最後まで「余裕」を作ろうとした結果、適切なペース設定やレースからの抜けどころの見極めに成功したということになろうか。
いずれにせよ、彼らのレース後の話っぷりからしても、今回の経験が少なからず自信につながっていることは間違いなさそうである。
考えてみれば、これだけのプレッシャーとアドレナリンを同時に感じられる機会は、普段のトレーニングで意図的に作り出せるものではない。
そして、世界で活躍している一流の中長距離選手の多くが、ペースメーカーとして活躍?していたキャリアをもつのもまた事実である。
「ハイペースのなかで余裕を作る」ために行うトレーニングの神髄は、こういう経験のなかにこそあるのかも知れない。
選手、そして関係者の皆様、お疲れ様でした。