世界ジュニア選手権&美ら島沖縄総体

moriyasu11232010-08-05

7月28日から8月2日まで、日本陸連科学委員会の活動で沖縄滞在。
宿泊先と競技場がかなり離れていたため、7時半にホテルを出発、炎天下とゲリラ豪雨のなかで撮影&分析、20時〜21時にホテルに戻るという毎日。
沖縄に滞在して、一度も砂浜を踏まなかったのは初めてである。

『14年越し、沖縄高校総体実現 財政難で一度は断念』
28日に沖縄県で開幕した全国高等学校総合体育大会高校総体)は、今回で47都道府県を一巡した。来年からは開催地の負担を軽減するため、ブロック開催となる。かつて開催が内定しながら断念した沖縄は、ケチケチ作戦で最後の単独開催を乗り切る。
沖縄県高等学校体育連盟顧問の白金(しろかね)広正さん(60)は、特別な思いで総合開会式を迎えた。「あれから14年。やっとここまで来ましたね」
1996年、白金さんは同県教育庁の担当指導主事だった。2001年の沖縄総体が内定し、全国高等学校体育連盟高体連)との調整役として奔走していた。「ある日、『ちょっと待てよ』という話になった。訳が分からなかった」。財政的に開催は厳しいという結論になり、熊本県に肩代わりしてもらった。
すでに地元開催へ向け、選手強化プログラムが動き出していた。断念を聞いた子どもたちは泣いた。「大人が子どもの夢を砕いてしまった」
熊本での01年総体が終わると、沖縄は10年開催へ動き始めた。白金さんは08年から今年3月まで、県高体連会長を務めた。「前だけ向いて突っ走った。断念した当時より経済状況が悪い中で開催へこぎ着けられたのは、あの悔しさがあったからだと思う」
近年の高校総体の大会運営費は平均約20億円だが、今総体は約14億円と切りつめた。沖縄には空調の整った屋内施設が少ない。レンタルに頼るが、予算的に全会場はとてもカバーできないため、各競技のメーン会場分だけにとどめた。本土の強豪バレーボール部の監督は「空調がないと、すぐに汗でボールがベトベトになる。セッターのトスも乱れるだろう」と懸念する。
市町村も切りつめた。最多の6競技を開催する那覇市では、会場内外の看板を前回の総体が開かれた奈良県から引き継いだ。船でコンテナ二つ分を運んできた。高校名のプラカードは6〜7割がそのまま使え、看板の経費は約3分の1に抑えられたという。(篠原大輔)
(2010年7月28日 アサヒコムより)

恥ずかしながら、記事のような事情は沖縄入りしてから知った。
「ケチケチ作戦で最後の単独開催(by朝日新聞)」ということもあってか、活動に際して想定外の事態も少なからずあったが、大会関係者の熱い想いがそれを雲散霧消させた。
インターハイにおける日本陸連科学委員会の活動は、恐らく1993年(宇都宮大会)が端緒であり、今回の出場選手の多くがオギャーと生まれた時期に重なる。
そして、宇都宮大会に選手として出場し、今大会には指導者として参加という方と立ち話などしながら、改めて20年近くも続いている活動であることを実感する。
ときに、会場ですれ違う関係者から「(この活動)いつまで続けるの?役に立ってるの?」などと激励(揶揄)されることもあるが、多くの選手や指導者がデータや連続写真の貼られた掲示板の前に立ち、また我々の控え室まで訪問してくれるのを目の当たりにするにつけ、このような活動の意義や価値を再認識するのである。

野生の思考

野生の思考

神話的思考の特徴とは、構成要素が雑多で、広範囲にわたってはいるが有限の語彙を使って自己を表現することにある。どんな仕事の場合でも、それを使用するしかない。というのは手元にそれしかないからだ。(…)
計画を立てると彼はわくわくする。でも、彼が最初にやるのは回顧的な手続きである。これまでに集めたり作ったりしてきた道具と素材の全部を彼はじっとみつめる。そして、その一覧表を作るか、あるいは新しく作り直す。そして、ここが肝心なところなのだが、彼はそれらの道具材料を選び取る前に、彼の抱える問題にこれらすべての素材と道具がどんな応答をなし得るのかを数え上げるために、それらと対話を始めるのである。彼の〈宝庫〉を構成するこれらの雑多なオブジェに彼は問いかけ、それらのひとつひとつが何を〈意味する〉ことができるのかを知ろうとするのである。
(byレヴィ=ストロース氏)

レヴィ=ストロースは、このような「ありあわせの道具や材料を使いまわしながら都度の技術的要請に応える態度」を、近代人の「科学的思考」に対して「野生の思考(神話的思考)」と名付けた。
フランス語には、「ブリコラージュ(bricolage)=寄せ集めのあり物を用いてモノを作ったり修繕したりすること」や「ブリコルール(bricoleur)=ブリコラージュを実践する人(職人など)」という言葉がある。
ブリコルールは、どんなものを見ても、どんなに役に立ちそうもないものを見ても、「何かしらの使い道があるのではないか?」と自問する。
そして、例えば1本の木の枝を、ときに「土を掘る道具」として、ときに布と組み合わせて「テントの支柱」として、ときに「舟の櫂」として、ときに皿と組み合わせて「すりこぎ」として、さらには「孫の手」として使う…というような「使い回し」をする。
ブリコルールの野心は、「有限のリソース」から「無限の意味」を引きだそうとするところにあり、その知的努力は「一つの道具・素材が適用しうる限りの使途」の発見に集中されるという。
この「野生の思考」とは、「有限の(身体)リソース」から「無限の意味(可能性、パフォーマンス)」を引き出すために、あらゆる身体的・知的努力の「最適化」を図るスポーツトレーニングとの親和性が高い思考形態であるといえるだろう。
役に立つかどうかは、役立てようと考えているかどうかで決まる。
本物の「知性」とは、その役立て方が「未知」の世界から到来することを確信しつつ「思考し続ける」人間にしか宿らないのである。
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少し前のことになるが、昨年のインターハイチャンピオンの二人が、世界の舞台でもやってくれた。

世界ジュニア選手権 男子400mH決勝結果
1位 Jehue Gordon(TRI)49.30
2位 Takatoshi Abe(JPN)49.46(PB)
3位 Leslie Murray(ISV)50.22(SB)
4位 Varg Königsmark(GER)50.47(PB)
5位 Jack Green(GBR)50.49(PB)
6位 Stef Vanhaeren(BEL)50.99
7位 Emir Bekric(SRB)51.06
8位 Boniface Mucheru(KEN)52.16

安部孝駿選手が、昨年のベルリン世界陸上4位で48.26秒のPBをもつゴードン選手をラストで猛追しての惜敗&銀メダル獲得。
ちなみに2008年の世界ジュニア選手権で銀メダル(49.25秒)を獲得しているダッチ選手が、今年の全米選手権では、47.63秒の好記録で2位に入っている。
ゴードン選手、ダッチ選手、そして安部選手。
いずれも「平成生まれ」の若者であるが、そう遠くない将来、シニアの世界大会でのつばぜり合いが見られそうである。

世界ジュニア選手権 女子400mH決勝結果
1位 Katsiaryna Artsiukh(BLR)56.16(WJL)
2位 Vera Rudakova(RUS)57.16(PB)
3位 Evonne Britton(USA)57.32(PB)
4位 Shiori Miki(JPN)57.35(PB)
5位 Lisa Hofmann(GER)57.74(PB)
6位 Ristananna Tracey(JAM)57.77(PB)
7位 Kelsey Balkwill(CAN)57.94(PB)
8位 Cristina Holland(USA)1:00.12

三木汐莉選手は、16歩予定の前半、15歩の選手につられて3〜6台目までを15歩で走破(その後は全て17歩)したとのこと。
今後、前半15歩のレースパターンが確立できれば、一気に55秒台の可能性も拓けてくるだろう。
今年のインターハイで活躍した選手達が、安部、三木両選手に続いてくれることに期待したい。
関係者の皆様、お疲れ様でした&ありがとうございました。