刈穂(大吟醸)

moriyasu11232009-01-07

友人のH君(高校男子400mで歴代12位記録・46.79秒の持ち主)から、奥様の故郷である秋田産の清酒を頂戴した。
秋田県は、言わずと知れた米どころ、美人どころ…要するに酒どころである。
“秋の田のかりほの庵のとまをあらみ わが衣手は露にぬれつつ”(天智天皇中大兄皇子 後撰集巻六)
歌中の「かりほ」とは「仮り庵」または「刈り穂」の意であり、「刈穂」の酒名はこの歌に由来する。
一昨年、秋田国体の折、刈穂の山廃純米超辛口に「うるうる」してから早1年と3ヶ月。
このような形で再びお目にかかれるとは…(飲む前からうるうる)
冷蔵庫から出して、少しだけ室温になじませてから飲む(やっぱりうるうる)。
秋田国体の感動が蘇る(仕事してんのか?)
刈穂の山廃仕込みには、昭和初期から中期まで用いられていた「伝統」の手法に、その後あみだされた「独自」の手法が加えられている。
その特徴は、厳寒期の長期低温発酵で、その発酵期間は「酒母」「もろみ」を通じて約2ヶ月にも及ぶ。また、蔵で自家培養した酵母を使い、蔵にあった酵母の保持を心がけることで独自の風味を醸しだしている。
このような「手間」をかけることで、山廃仕込み独特の味とコクが調和する酒質が生み出されるのである。
もうひとつ重要な要素に「水質」がある。
仕込み水は、奥羽山系の雪解け水が地下深く浸透し、蔵の近くに堆積されている厚さ13mの砂礫層に洗われて汲み上げられる。
秋田県では珍しい中硬水。
この山廃に適した湧水のおかげで、酵母の生育しやすい環境がうまれ、発酵期間が長くなっても安全な醸造が出来るようである。
刈穂の蔵には、昔ながらの六つの槽(酒をしぼるための道具)がある。
ひとつの蔵に六つもの槽があるのは、今ではかなり珍しいらしい。
人手と手間が掛かることから、多くの蔵では新しい機械にとって代わられているが、この蔵では未だにこの手法に「こだわり」続けている。
伝統、独自、手間、こだわり…
これらは銘酒を生み出すためのキーワードであるが、「トレーニングもコーチングも一緒ですよ」というH君からの無言のメッセージでもある。
H君、ありがとう。また飲もう。